すぐ傍らに、真っ赤に染まった父の頭が転がっていた。
嗚咽を漏らして、キーツはそっと…両手で父の頭を手に取った。
ずしりと重い。
血を吸って濡れた短い前髪を払い、顔を見つめた。
驚くほど白い、いや、青白い顔は、この闇の中でも映えていた。
両目を閉じ、口も真一文字に閉めた父の顔は、不思議と生きていた頃とあまり変わらない。
仏頂面で、愛想の一つも無くて、にこりともしなくて、細かい所をいつも指摘してきて、礼儀作法にはうるさくて…。
………頑固で、真っ直ぐで、滅多に話さなくて、怒ったら怖くて、全然相手にしてくれない冷血漢と思っていたら、単なる照れ屋だったり……。
本当は……冷たい人なんかじゃないんだ。
母の墓前で、人目を忍んで泣いていたのも、僕は知っている。
―――きっと……寂しくて仕方無いんだ。
無言で撫でてくれた父。
手を繋いでくれた父。
時々褒めてくれた父。
叱ってくれた父。
勉強を教えてくれた父。
尊敬していた、ただ一人の、唯一の肉親は…………もういない。
ここにいるのに……もういないんだ。
もう、撫でてくれるあの大きな手は……無い。

