グロテスクな生き物の残骸。
糸を引く血液。
真っ白な皮下脂肪。
溢れ出た赤黒い臓器。
血の海に広がる髪の毛。
剥れた爪。
砕けた歯の破片。
いくつも並ぶ、神経が繋がったままの眼球。
皮膚から飛び出た骨。
乾ききった、千切れた舌。
目に映るもの全てが悪夢で、信じられないものばかり。
これが同じ人間?同じ生き物?
息をして、歩いて、話して、笑ったり泣いたり………。
………これが?
明かりも無しに長い螺旋階段を上り、果てしない廊下を走りぬけたため、身体は呼吸さえままならないほど体力を消耗していた。
腸を斬られて絶命している数匹の獣の中央に、ゆっくりと歩み寄った。
真っ暗な中に、その人影は横たわっていた。
間違いない。
間違える筈が…無い。
……息をしていない。身体は……まだ暖かいのに。
その手前で膝をつき、横たわる大きな背中に触れて………ただ………泣いた。
「―――――………父……上……」
キーツは声を漏らすまいと唇を噛み締めたが、押さえ切れなかった。
父は……死んでいた。
首は無かった。

