亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~


グロテスクな生き物の残骸。

糸を引く血液。

真っ白な皮下脂肪。

溢れ出た赤黒い臓器。

血の海に広がる髪の毛。

剥れた爪。

砕けた歯の破片。

いくつも並ぶ、神経が繋がったままの眼球。
皮膚から飛び出た骨。

乾ききった、千切れた舌。











目に映るもの全てが悪夢で、信じられないものばかり。


これが同じ人間?同じ生き物?

息をして、歩いて、話して、笑ったり泣いたり………。

………これが?







明かりも無しに長い螺旋階段を上り、果てしない廊下を走りぬけたため、身体は呼吸さえままならないほど体力を消耗していた。






腸を斬られて絶命している数匹の獣の中央に、ゆっくりと歩み寄った。

真っ暗な中に、その人影は横たわっていた。

間違いない。

間違える筈が…無い。





……息をしていない。身体は……まだ暖かいのに。

その手前で膝をつき、横たわる大きな背中に触れて………ただ………泣いた。













「―――――………父……上……」














キーツは声を漏らすまいと唇を噛み締めたが、押さえ切れなかった。



父は……死んでいた。
首は無かった。