亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~

玉座から降り立ち、カルレットは杖を床についた。


「―――王族に伝わる魔法。……白の魔力と違い、黒の魔力は禁術。………使い手は死を覚悟せねばなりません……」

「………ふん……立派な覚悟だな?」

大柄な男がにやにやしながら言った。


………手はもう…これしか無いのだ。


カルレットが意を決した時、二人の男が急に後ろを振り返った。


「………総団長…どう致しますか…?一思いに殺りますか?」

「…面倒ですよ。………早く殺っちまいましょう」






暗い廊下の奥から、もう一人………見知らぬ影がゆっくりと歩み出てきた。



天井の眩しいシャンデリアの明かりが、その影の輪郭を浮き彫りにしていく。




―――長く白い髪、虚ろな目、黒い軍服で包んだ細い身体。
右手に握られた、名誉ある者にだけ与えられる騎士団の剣。



















―――カルレットは目を丸くした。














現れた男は、光りの無いガラス玉の様な瞳を向け、うっすらと笑みを浮かべた。




















「―――お久しゅう御座います。………カルレット……………様…………………」