亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~


ローアンは震えるか細い声で、耳元で囁いた。





聞こえてくる荒い呼吸は、何度も途切れた。



「―――ほら………ね………ローアン」


埋めた顔は見えないが、リネットは笑っている様な気がした。





「―――何でも気が……早くて………乱暴で………これだから……殿方は………」





リネットの身体が急に重くなった。

解けた茶色の髪が、さらさらと肩から流れ落ちた。











「………殿方は…………………嫌いなの………………………分かった…?………………ローアン……………」










リネットの両腕が、力無く落ちた。

ローアンの肩に頭を預けたまま、リネットは動かなくなった。













動かなくなった。












動かなく…。













「………お姉様………お姉様…………リネット……お姉……様…」











やがてはその温もりも消え失せてしまう姉を、ローアンは天井を見上げてぎゅっと抱き締めた。





押さえられない感情が、熱い涙となって溢れた。

止まらない。






涙が、止まらない。










「―――……なん…で…」