亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~



背丈の高い細い姉。

姉妹の中で一人だけ違う茶色の髪。

彼女の目付きの鋭い大きな瞳は、多くの男性を一時は虜にし、うろたえさせる。


姉思いの優しい姉だった。

国のために出来る事は何かといつも考えていた。



尊敬していた。







素敵な姉。





たった一人のリネットという姉。













そんなリネットが生まれて初めて、今…………自分を抱き締めてくれていた。



暖かい姉の腕。

小刻みに震える姉の腕。






痛みに堪える姉。















………リネットはローアンを庇って、背中を深く斬られていた。


肩から腰にかけて伸びる真っ赤な切り口から、姉の血が静かに、滝の様に、流れていく。






ローアンは呆然としていた。




自分を包んでいる彼女の両腕から、少しずつ力が抜けていく。



それが嫌で、ローアンはひしと姉の身体を支えた。




「―――リネット…!?」



カルレットの悲痛に満ちた叫び声が響いた。






支えるリネットの身体が、徐々に傾いてきた。

立つこともままならないリネットは、ローアンに身を預けた。





「―――お姉様……」