亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~

ついさっきまで、扉の前で横一列に並んでいた敵兵士達が、一瞬で血の海に立っていた。

足下に転がる真っ赤な生首をブーツの爪先で蹴り上げ、帽子を深く被り直していた。





言葉も出ない。











人を人と見ない、あまりにも残酷な…。









「―――なんて事を…!」

恐怖よりも憤りが勝った。
カルレットは玉座から降りようとした。





「……動くんじゃねぇよ」

大柄な男がそう呟くと同時に、玉座の周りを敵兵士が数人囲んだ。

踏み止どまるカルレット。



「………キングの駒は無駄に動くものではありませんよ。………順序というものがあります」


ローアンはルアにしがみついたまま立てずにいた。

ルアは力無く唸り声を上げるだけだ。

敵兵士達を統率している二人の男を、ローアンはただただ凝視するしかなかった。







ふと、その二人の背後の暗闇に、ぼんやりとした人影が見えた気がした。










あの男だ。








あそこに………あの白髪の男が立っているのだ。









恐怖。







ローアンは泣きそうになるのを、唇を噛んで堪えた。


怖い。









嫌。