亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~



―――ブンッ……



青い光は一瞬で広がり、城内を包んだ。



兵士達が振り下ろす剣が、ピタリと止まった。

丸い玉の血飛沫が、屈折した光が、揺れる髪が、兵士達に食らいつく獣の牙が…………………全て止まった。





時が止まった。






この静止画の様な空間で動いているのは、ルアとローアンのみ。


時間を止めるなど………。

神の使いとされる聖獣だからこその技。
こんなこと、他に魔の者達くらいにしか出来ない。




止まってしまった奇妙な時間の中をルアは走り抜けた。


正面に立つ白髪の男の頭上を飛び越えた。


その瞬間、ローアンは男の顔を見た。




垂れた前髪の間から覗く虚ろな二つの目。

光の無いガラス玉の瞳が。










………ギロリとローアンを捉えた。










―――っ…!?







ルアは人込みを掻き分けて謁見の間へ向かった。


男の姿が小さくなり、やがて視界から消えた。







―――ブンッ……と青い光が消えた。

同時に、全てが動き始めた。












何事も無かったかの様に繰り返される乱闘。
その最後尾で、クライブはぼんやりと虚空を見詰めた。