亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~

後ろにいた筈の獣は“闇溶け”で暗がりに入り、いつの間にか前へ移動していたのだ。


前後を取られた。

ルアは立ち止まり、呻き声をあげて威嚇する。
背中のローアンは震えていた。



………どうなるのだろう。

ここに来るまでたくさんの死体を見た。


………私もあの様に………。






―――ザシュッ。




生々しい音が聞こえたかと思うと、ルアの足下に獣の頭が横たわった。

獣達はルアからその真後ろにいる人間に警戒しだした。

ローアンが見上げると、そこには血だらけの剣を握った大柄な男がいた。
ローアンは大きく目を見開いた。



「―――…ゲイン侯爵………!!」

キーツの父が、肩で息をしながらそこにいた。


「………ローアン様……ご無事で……。………王の元へお急ぎ下さい…」

ゲイン侯爵はルアとローアンを通り越し、黒い獣の前へ出た。


「………ゲイン侯爵……貴方も早く…」

「私はここで足止めを致します。………その間に……。お気をつけ下さい。先程敵の兵士が何人も謁見の間へ向かいました。どうにかしてその軍勢を越え、王の元へ………!」

飛び掛かってきた獣に剣を振った。獣は刃を上手く避け、再び後退した。