謁見の間へ通じる長い長い廊下は、しっかりと兵士達で囲まれていた。
鋼鉄の鎧の壁が何重にもそびえたつ。
………しかし、男にとってそれは障害にもならないただの木偶の坊の群れにしか見えなかった。
ふいっと指を振ると、呼び集めたライマンと剣を構えた部下の兵士達が一斉に飛び掛かった。
黒い獣と灰色の兵士達は走り、壁を駆け、“闇溶け”で敵の影に入り込んだり、引きずり込んだりした。
奇怪で悍ましい能力の前に、伝統ある騎士の剣は切れない闇を切り続けた。
最後尾にいる男は始終微笑を浮かべながら、崩れていく騎士の壁をゆっくりと進んで行った。
ローアンはルアの真っ白な背中に顔を埋め、ひしと掴んでいた。
ルアは小さなローアンを背中に抱えて長い廊下をひたすら走っていた。
背後からは黒い獣が数匹、涎を垂らして迫っていた。
怖くて顔を上げられない。
今はルアだけが頼りだった。
母がいる筈の王の間…謁見の間までは、まだ距離がある。
このまま追いつかれずに辿り着くことが出来るだろうか。
二手に別れた道に差し掛かった。
謁見の間は曲がった先だ。
方向転換しようとした時、正面に黒い獣が現れた。

