亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~



暗くてよく見えなかったが、ようやく闇に慣れてきたキーツの目に、それは飛び込んで来た。











「――――エル……シア様……」










アレクセイは手を止めた。

二人の視線の先。すぐ側に、蝋人形の如く真っ白な、倒れたエルシアがいた。


豊かな金髪の髪が、床に広がる血を吸って赤く染まっていた。


「なんと…………エルシア姫様………痛々しいお姿に…」

わなわなと震えながらアレクセイはエルシアの手を取った。

―――脈は無い。



その手は、悲しいほどひんやりと冷たかった。







「………王族を………殺めるとは………!…………気違いにも程がある………!!」





動かない物となってしまった抜け殻のエルシア。


………つい数日前まで……あんなに笑っていたのに。

結婚式を楽しみにしていたのに。



………彼女はもう………もう……。


ちらりとオーウェンに目をやる。





閉じられた両目の端に、玉の様な涙が溜まっていた。

















―――皆………死んでいく。





―――皆…。











―――………ローアン……!




キーツはその場で立ち上がった。