亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~

中の様子をじっと伺っていたアレクセイの目が、ある一点で不意に止まった。


「………あれは……オーウェン……様…?」
「――オーウェン!?」

キーツは扉の隙間に身体を滑り込ませて中に入った。

制止しようとしたアレクセイの手は空を掴んだ。


広間の一番前に、オーウェンと思われる男が血塗れで倒れていた。

………ハニーブラウンの髪、細身だが大柄な身体。

間違いない。

あれはオーウェンだ。



キーツは急いでオーウェンの傍らに屈み、ピクリとも動かない身体を揺すった。


「オーウェン!オーウェン!!………どうしたんだよ!一体誰がこんな…!」

すぐに後から来たアレクセイは、オーウェンを仰向けにした。


「………かろうじでまだ息があります。………丈夫な方ですな。しかし………止血をしなければ…」

肩や胸からは、血が絶え間なく流れていた。ぐったりとしていて身体は冷たいが、それでもか細い息をしていた。

アレクセイはビリリッと自分の袖を破り、布切れで応急処置をし始めた。

「………何処か安全な場所へ運ばなければ…」

「…うん……………他の人達はどうかな……まだ生きている人がいるかもしれ…………」

………キーツは唖然とした。