亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~

鍛えぬかれた戦士達の無惨な亡骸を見詰め、アレクセイは顔をしかめる。







――いや………まさか……。






「―――キーツ様………私の後ろに」

「………父上達は……大丈夫かな……。………広間へ行こう。……式はそこで始まる手筈だった…」


二人は走った。

あちこちから悲鳴が聞こえる。

今にも消えそうな蝋燭の明かりが、血だらけの城内を淡く照らしていた。












広間の扉は開いていた。


手を掛けて開けた途端、隙間から生暖かい籠った空気が漏れた。

………血の臭い。それもかなり濃い。

そっと中を覗いたアレクセイの表情が、一瞬で険しくなった。

「………キーツ様………無理をしないで下さい。……嫌なら入らなくとも宜しいですから…」


キーツも隙間から中を覗いた。






最初に目に飛び込んできたのは、顔半分が無い人間だった。



バッとキーツは目を逸らし、込み上げて来る吐き気を抑えた。



「………酷い…」




広間は死体だらけ……と言うより、身体の破片だらけだった。

白かった筈の床は真っ赤で、シャンデリアは返り血の滴を垂らしている。


風も無いのに、ランプがゆらゆらと揺れていた。