亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~

「…なりません!………何が起きているのかも分かっておりませんのに…」

キーツは丘の上の城へ視線を向けた。
薄暗い城内で、火花の様な光が度々散っているのが見えた。






………あそこには……皆いるんだ。
貴族の人間、エルシアやリネット、オーウェン、王………父上……。





………ローアン。












「連れて行け」




低い声でキーツは言った。
赤い炎の光に照らされ、彼の異なる色の両眼はどちらも深い色合いを帯びて揺れていた。
この目の前の少年が、あの寡黙で威厳ある我が主の様に思えて、アレクセイは苦笑した。










城への長い階段のあちこちに、暗闇に紛れて白い人影が横たわっていた。

国家騎士団の兵士達だろう。
戦っていたのか、剣と消えた松明が散乱している。

………雨が降った訳でも無いのに、階段を一段一段踏み締める度に、ビチャビチャと靴底で弾く音がした。


………暗闇で良かったとこの時思った。












息を切らして階段を上がって行くと、高さが約20メートルある純白の巨大な扉が、見張りも無しに大きく開け放たれていた。
そこから見える城内はやはり暗く、人間らしいものが倒れていた。