車は、普段はそう易々と通れない城門を何の障害も無く過ぎた。
通称貴族の城。よく立ち寄っていた丘の下の屋敷前に車が差し掛かった時、目が眩む様な眩しさと異常な熱が飛び込んで来た。
屋敷は明々と燃えていた。
高い城壁で分からなかった。
パチパチと火の粉を散らし、物言わぬ屋敷は窓という窓から火を吹いていた。
………屋敷の手前に、倒れている人影があった。
屋敷から逃れて来た召使の者達のようであったが………。
………どれも背中や腹部から大量の血を流していた。
………ピクリとも動かない。
火から逃れた挙句、屋敷前で何者かに斬られた様だった。
………初めて死体を見た。……こんな残忍な…。
直視してしまったキーツは、わっとアレクセイにしがみついて顔を埋めた。
アレクセイはそのままゆっくりと後退し、車の裏へ回った。
「―――キーツ様………車の中に。私が様子を見て参ります。………もし万が一私が戻らなかったり、不審な者が現れた時は、すぐにお逃げなさい。家来の者に命じておきます故…」
「………僕も行く…」
キーツは揺れる眼でアレクセイを見上げた。
「………城に……僕も行く………僕を連れて行ってくれ」

