大きな椅子に腰掛け、頬杖を突いたまま、ただじっと………。


描かれた女性の瞳は、何も語らない。




ふと、男は乾ききった口を静かに開いた。
聞こえるか聞こえないかくらいの小さな呟きだったが、低い、威厳のある声だった。






「―――………出て来たらどうだ………リンクス………ベルトーク=リンクス………」


男しかいない部屋の扉の前に、一瞬黒煙が立ち上ぼり、その中からすらりとした長身の影が現れた。



左目のレンズをほんの少しだけずらし、無言でベルトークは、男の元に歩み寄った。



すぐ隣りで立ち止まり、同じ様に正面の絵を眺めた。



「―――…二週間後と決まりました。総勢をかけての襲撃です。」

男から返事は無かったが、ベルトークはそのまま続けた。

「………宣戦布告は済ませてあります。あとは………向こうがどう来るか………」




「―――そうか」










………長い沈黙が続く。

報告を終えたベルトークは、踵を返そうとした。



「―――トウェインは…どうだ………」



ぴたりとベルトークの動きが止まった。



「………何の兆候もありません………やや不満がある様ですが……」




「……」