亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~













「―――エル…シア……?」







静寂漂う大広間。

エルシアの身体から剣を抜いた直後、正面の開け放たれた扉から、ふと第三者の声が聞こえた。


ベルトークはちらりと入口で佇む人間を見た。


ここまで足を止めることなく全速力で駆けて来たのか、額には大粒の汗が浮かび、全身で息をしていた。





オレンジの澄んだ瞳は大きく見開かれ、床に倒れているエルシアを映していた。


………エルシアの腹部からはどくどくと鮮血が溢れ出ており、その一面を真っ赤に染め上げていた。













「―――てめぇ……」


その視線は、突然ベルトークに向けられた。


………憎悪が入り交じる殺意。

………良い目をしている。














「……何しやがるっ………!!」















片手の剣を素早く構え、男は吠えながら迫って来た。







「――ああああああああ!!」













ぶん、と風を切る音。ベルトークはひらりと寸前の所で避けた。

剣はそのまま壁を切り裂いた。


今のたった一回の斬撃で、真っ白な堅い壁に大きな長い亀裂が走った。


……物凄い力だ。