「―――エル…シア……?」
静寂漂う大広間。
エルシアの身体から剣を抜いた直後、正面の開け放たれた扉から、ふと第三者の声が聞こえた。
ベルトークはちらりと入口で佇む人間を見た。
ここまで足を止めることなく全速力で駆けて来たのか、額には大粒の汗が浮かび、全身で息をしていた。
オレンジの澄んだ瞳は大きく見開かれ、床に倒れているエルシアを映していた。
………エルシアの腹部からはどくどくと鮮血が溢れ出ており、その一面を真っ赤に染め上げていた。
「―――てめぇ……」
その視線は、突然ベルトークに向けられた。
………憎悪が入り交じる殺意。
………良い目をしている。
「……何しやがるっ………!!」
片手の剣を素早く構え、男は吠えながら迫って来た。
「――ああああああああ!!」
ぶん、と風を切る音。ベルトークはひらりと寸前の所で避けた。
剣はそのまま壁を切り裂いた。
今のたった一回の斬撃で、真っ白な堅い壁に大きな長い亀裂が走った。
……物凄い力だ。

