銅像の剣は模造品だった。だが………刺すことは出来る。
エルシアはぐるっと後ろに回り込み、空いている獣の背中に向かって剣を思い切り投げた。
切っ先は真っ直ぐ飛び、ズッ…と生々しい音を出した。
剣は獣の後ろ首に突き刺さり、串刺しにした。
断末魔の悲鳴を上げ、獣はどうと倒れた。
「………はぁ……はぁ……」
エルシアは震える手で、獣から剣を抜き取った。
一歩歩く度に、靴底でブチッと何かを潰した。
粘着質な血液が糸を引き、絡み付く髪の毛や肉片、皮膚をドロドロと流していく。
さっきまでたくさんいた貴族の人間が、エルシアが振り返ったそこにはもういなかった。
真っ赤。
赤しかない。
足下に転がる首の無い胴体も、五本指の内のどれかの指も、剥れた爪も、下顎も、むき出した骨も、白い脳髄も……………………。
………全部………幻に違いない。
………こんなのが人間だなんて………認めない。
…………こんなの……嫌。
―――嫌。
―――重なり合った屍の中から、血塗れの子供が這い出て来た。
黒い獣達は子供に目を向けた。
「―――止めて!!」
エルシアは剣を構えた。

