亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~




「―――逃げて…!!」

声を上げた。









瞬間、大広間の至る所から、真っ黒な獣が現れた。





何が起こっているのか分からずにいる人々。
そんな彼らに牙を剥き、狙いを定めて飛び掛かった。



最初に、正面扉の手前にいた老紳士が餌食となった。

あっという間に真っ黒な獣に押し倒され、爪で喉を裂かれた。
上下に並んだ鋭い牙が、動揺する眼球に食い込んだ。









「―――うわああああああああああぁぁぁ!!」


「ぎゃあああああああぁぁぁ!!」


「―――助けっ……!!」


「いやああああ!!」





わっ、と脇の扉に走る人々。

エルシアを追い越し、我先にと逃げ出した。


その逃げ惑う人々に、獣は容赦無く、見境無く襲いかかった。


一人、また一人と、床に倒れ、血飛沫が舞う。




呆然と立ちすくむエルシアに、誰とも知れないドロリとした血が何度も掛かった。

エルシアの服は、血で染まっていった。








無残なバラバラの屍が増えていく中、目の前に黒い獣が“闇溶け”で現れた。


呻き声を上げ、エルシアに飛び掛かってきた。


エルシアは紙一重で避け、騎士の銅像から剣を引き抜いた。