「―――逃げて…!!」
声を上げた。
瞬間、大広間の至る所から、真っ黒な獣が現れた。
何が起こっているのか分からずにいる人々。
そんな彼らに牙を剥き、狙いを定めて飛び掛かった。
最初に、正面扉の手前にいた老紳士が餌食となった。
あっという間に真っ黒な獣に押し倒され、爪で喉を裂かれた。
上下に並んだ鋭い牙が、動揺する眼球に食い込んだ。
「―――うわああああああああああぁぁぁ!!」
「ぎゃあああああああぁぁぁ!!」
「―――助けっ……!!」
「いやああああ!!」
わっ、と脇の扉に走る人々。
エルシアを追い越し、我先にと逃げ出した。
その逃げ惑う人々に、獣は容赦無く、見境無く襲いかかった。
一人、また一人と、床に倒れ、血飛沫が舞う。
呆然と立ちすくむエルシアに、誰とも知れないドロリとした血が何度も掛かった。
エルシアの服は、血で染まっていった。
無残なバラバラの屍が増えていく中、目の前に黒い獣が“闇溶け”で現れた。
呻き声を上げ、エルシアに飛び掛かってきた。
エルシアは紙一重で避け、騎士の銅像から剣を引き抜いた。

