騒然としていた大広間。
法螺貝の音の響きは、ここにも届いていたのだ。
正面ではなく、もう一つの脇の入口から入ったエルシア。
エルシアが姿を現わした途端、大広間の人間のほとんどの視線がこちらを向いた。
「―――エルシア様!」
「エルシア様、これはどういう…!」
「先程の妙な音は……」
エルシアの周りにぞろぞろと集まってくる人々。
怯えている子供の泣き声と困惑する婦人や御老人、混乱の中癇癪をおこす男。
………全てが混合し、耳障りな不協和音となって大広間を渦巻いた。
「―――皆さん、落ち着いて下さい。………大丈夫……大丈夫ですから……。…ここから移動して下さい。御婦人方と御子様を優先に…………城にある車では足りません。御屋敷から車でいらっしゃっている方は………」
―――言い掛けて………エルシアは息を呑んだ。
正面の扉が、音も無く開いた。
………何も無い。何もいない。
けれど………天井のシャンデリアの明りで浮かんだ人々の足下の影に………異なる小さな、実体の無い影がいくつも滑り込んで行った。
エルシアは大きく目を見開き
涙を流した。

