目元に付着した返り血を拭うと、視界の隅に、さっきまで身の回りの世話をしてくれていた男の凄惨な屍が見えた。
頭など、原形を止どめていない。
大きな黒い犬に散々噛まれてああなったらしい。
すっと、オーウェンは剣を構えた。
四方には、呻き声を漏らす真っ黒な獣が今にもオーウェンに飛び掛かろうと構えていた。
………取りあえず一匹は殺した。
あと四匹…。
「………………何処から湧いて出てきやがった…犬どもが…」
魔獣ライマン…。
確かそんな名前だった筈だ。
国家騎士団の中の先鋭部隊か何かが、前々から対ワイオーンの戦力として考案していたと聞く。
………が、今ライマンは、人間を襲っている。
………話がだいぶ違うじゃねぇの?
あの不自然な法螺貝の音の後、しばらくして急に騒がしくなった。
流れる様に、この部屋にライマンが入り込み、世話係の家来を襲った。
………広間には大勢人がいる。
父も、母も。
大丈夫だろうか?
―――エルシア………。
オーウェンは唇を噛み締めた。
「―――どうした……………………………早く来い!!」

