エルシアは、本当ならあの赤い花嫁衣装を着て、大広間へ向かう筈だった。
しかし、今は着替えもせず普通のドレスで、息を切らして大広間へ駆けていた。
額に浮かぶ汗でせっかくの化粧は崩れ、整えた髪も振り乱れていたが、エルシアは足を止めなかった。
その後ろから、リネットが続いて来た。エルシアはばっと振り返る。
「………リネット………貴女はお母様の所に行きなさい!!………ローアンを探して!!大広間には来ては駄目!!」
「…お姉様………何故ですの!!………私も一緒に………」
「危険よ…!……何が起こっているのか分からないのだから。………貴女はまだ小さいのだから………!」
………小さいのだから。………リネットは顔をしかめ、ドレスの裾を握り締めた。
「………こんな時でも私を子供扱いするのは止めて下さい!!………私だって考えて動いて…」
「―――お黙りなさい!!」
……突然大声で怒鳴ったエルシアに、リネットは驚いて閉口した。
………こんなに怒ったエルシアなど……生まれて初めて見た。
エルシアは泣きそうな顔で、リネットの前で膝を着き、小さな両肩に手を添えた。

