亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~






鳴り響いた一つの法螺貝の音。
それが警報であることなど分かっていた。

続いて扉が開く鈍い低音が聞こえたかと思うと、階下が急に騒がしくなった。


………悲鳴?

重なるのは獣の呻き声と人の声。


………何?

何が起きている?


この真下は…一体どんな光景が…。


「………嫌…嫌よルア……下へ行かせて………広間にはお姉様が………お母様が…!」

ローアンは前を遮るルアに言ったが、一向に通してくれる気配は無い。


………ここにいた方が安全…そういうことなのだろう。

ルアは自分を守ろうとしてくれている。

………しかし…。








「………ルア…………………良い子ね…」








心の底から信じられるこの真っ白な友を、そっと撫でた。





ルアは撫でられるまま、ふと頭を下げた。


聖獣は人に頭を下げない。

主と認めた者にだけ、恭しく頭を垂れるのだ。







「………ごめん…!」


その隙を突いて、ローアンは前の扉に手を掛けた。

思い切り押した扉は、いとも簡単に開いた。



一声吠えたルアの脇を擦り抜け、裾を摘んで、ローアンは細く狭い螺旋階段を一気に降り始めた。