鳴り響いた一つの法螺貝の音。
それが警報であることなど分かっていた。
続いて扉が開く鈍い低音が聞こえたかと思うと、階下が急に騒がしくなった。
………悲鳴?
重なるのは獣の呻き声と人の声。
………何?
何が起きている?
この真下は…一体どんな光景が…。
「………嫌…嫌よルア……下へ行かせて………広間にはお姉様が………お母様が…!」
ローアンは前を遮るルアに言ったが、一向に通してくれる気配は無い。
………ここにいた方が安全…そういうことなのだろう。
ルアは自分を守ろうとしてくれている。
………しかし…。
「………ルア…………………良い子ね…」
心の底から信じられるこの真っ白な友を、そっと撫でた。
ルアは撫でられるまま、ふと頭を下げた。
聖獣は人に頭を下げない。
主と認めた者にだけ、恭しく頭を垂れるのだ。
「………ごめん…!」
その隙を突いて、ローアンは前の扉に手を掛けた。
思い切り押した扉は、いとも簡単に開いた。
一声吠えたルアの脇を擦り抜け、裾を摘んで、ローアンは細く狭い螺旋階段を一気に降り始めた。

