亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~

「急かさないで、リネット。今やっと化粧が終えた所なのよ。この衣装を着ないと意味が無いでしょう?」

目の前の真っ赤な花嫁衣装。床に広がる花びらの様な赤い裾が美しい。


「………やっと着れるのね………お母様は?」

「謁見の間にまだいらしたわ。後からいらっしゃるそうよ」

「そう………大変ね。今朝からずっと玉座から離れていないらしいわ………」

リネットは腕を組んで溜め息を吐いた。

「でもまあ……これで一つお母様のお仕事が減ることになりますわ」

「フフ……そうね………………もっともっと…軽くしてあげなきゃ」

父が亡くなった後、母にこの大国全てが伸し掛かった。
まだ幼かったエルシアは、一人で政治を行いながらも夜な夜な泣いていた母を知っている。






『―――彼女は……カルレットはいつも独りだ。………僕はね……彼女の力になることが出来なかった………彼女の中にいつもいるのは……僕じゃないんだよ………エルシア………幸せには出来ないんだよ…』





病に臥せていた父の言葉。
悲しそうな顔を浮かべ、エルシアを撫で………逝ってしまった。



父と母は………お互いを信頼してはいたが………奇妙な距離を保っていたのだ。

それが何なのか。