「アレクセイ………遅刻だよこれ」
「………私としたことが………祝辞のメモを無くすとは……」
朝からアレクセイが大慌てで屋敷中をひっくり返しまくっていた。
何やら昨夜からずっと練りに練って考え出した誉れ高き祝辞(アレクセイ曰く)を、無くしたらしい。
「どんなの?」
「……左端を紐で留めている物で御座います……四百文字詰めで…二十枚束になっている…」
「長いよそれ。祝辞って言うよりレポートだよ…」
必死のアレクセイは、一階キッチンの鍋の中まで見ていた。メイド達は唖然と遠巻きに見ている。
………いくら何でもそんな所に…。
「アレクセイ……もう良いよ。お前なら例え二百や三百枚の物でも暗唱出来る…」
「何を言っておりますかキーツ坊ちゃま!!このアレクセイ、魂を込めて生み出した祝辞で御座いますぞ!簡単に諦めては………なりませんぞぉぉ―!!」
「はいはい!!分かりました!!軽い僕で御免なさいね!!でも出来れば褒め言葉として受け止めて欲しかったですね!!」
アレクセイとキーツはキッチンの中央でぎゃーぎゃー騒いでいた。
そうこうしている内に……もう夕方だ。
城まで遠いというのに………。
アレクセイの愚か者。

