亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~

リネットが声を掛けた青年は、リネットを見るなり…

「―――ひぃっ!?」
と、真っ青になってざざざーっと後退した。

利発そうな青年だが……今は目に恐怖の色が浮かんでいる。

リネットは扇子で口許を隠しながら……睨んだ。

「……まぁ………せっかくこちらからお声を掛けて差し上げたのに…何ですの、そのリアクション。………仮にも貴方は昔私を口説きなさった方でしょうに………」

「………御免なさい御免なさい御免なさい御免なさい御免なさい御免なさい(エンドレス)」

青年は隅の方でガタガタ震えていた。

「ふん………あの時本当に丸刈りにしていれば良かったかしら…」

青年を無視し、リネットは一人一人に挨拶をし始めた。

声を掛けられた青年がまた一人悲鳴をあげていた。


「……ゲイン侯爵、ようこそお越し下さいました」

ローアンはキーツの父を見つけ、丁寧に頭を下げた。

「ローアン様……姉君様のご結婚……おめでとう御座います」

「そんなに畏まらないで。………そういえばキーツは?……今日はまだ見ていないわ…」

「まだ屋敷です。私だけ一足先に入城致しましたので。………夜…始まる前にはこちらに着くでしょう。」