―――…紅茶は温くなっていた。
構わず口に運ぼうとすると、さっとアレクセイがカップを取った。
「………おやおや…いつの間にこんなに温く………昔話とは、なかなか時間がかかるものですな。………新しいものに換えましょうか」
「………本当だな………随分経ったな………どおりで腰が痛いわけだ。ずっと同じ体勢でいたからかな………」
ちらりと足下に目をやると、ルアは寝息をたてていた。
………俺の足の上に乗るなよ…とキーツは苦笑した。
「キーツ様、次はどの紅茶に致しますか?」
部屋から一端出て行こうとするアレクセイに、キーツは頬杖を付いて微笑んだ。
「……任せるよ。お前の作る紅茶は…昔から何でも美味い…」
「………恐縮ですな。……そう言われると、手抜きなんぞ出来やしません」
ハッハッハと軽く笑いながら、アレクセイは部屋を出て行った。
キーツは一息吐いて……目を閉じた。
―――約束。
大事な……
大事な。
………約束は………あの日を境に消えた。
全部
奪われた。

