ああ………これが悪名高きフェンネル王52世……狂王と呼ばれた男が行った………虐殺した魔の者達の碑石。
………実際に見たのはこれが初めてだった。
………なんて悍ましい。
「私の……お祖父様にあたる方が…血を一滴残らずこの石に流したそうよ。………どんな人だったのかしら。……私がまだお母様のお腹の中にいた頃、お祖父様は亡くなられたから。……お父様もね。この様な物……どうして作ったのかしら…」
ゴポッ…と泡が上っていく。
透明な赤い表面には、『フェンネル王52世、ここに眠る』とあった。
………こんな所に…しかもこんな物を墓石にするなんて………狂っている。
「………ねぇキーツ………近頃の……影のことだけど………世間が何て言っているか知ってる?」
キーツは碑石を見上げた。
………知らない筈が無い。
あちこちでそれは持ち切りだ。
………根も葉もない……単なる噂。人々の思い込み。
「………………52世の………悪政が招いた…魔の者達の呪い……だって……でもそんなの……本当かどうか……」
「………碑石が作られたのと影が現れたのは……ほぼ同時期。………有り得ない話でも無いわよね………第一………呪われても仕方ないわ」

