亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~

ローアンは玉座を通り越し、その背後へ回った。

薄暗がりの中、何か大きな物がひっそりとそこにあった。

大きさは大体五メートル程だろうか。
薄い、縦長い長方形の物体。

………板? ………なんだか光って……。



―――ゴポッ…





奇妙な音。
水の中で小さな泡が浮きだっていく様な…。


………長方形の物体の中心に、一瞬泡が見えた。

何処からか光りを反射している訳でも無く、泡自体がきらめいていた。

真っ赤な、透明な球体。

「………不思議よね………この石…中が透けているの。……中央だけが真っ赤なのよ。……水でも入ってるのかしら………たまにこうやって泡が下から上ってくるのよ」

ローアンは透明な赤い石の背後に回った。

赤いガラスの様な表面越しにローアンの顔が見えた。

「………こんなのが…玉座で見えなかった……………これは何?……綺麗な石だけど…なんだか…………………少し不気味だね」


………夕焼けや赤ワインの赤さではない。
……ゾッとするくらい生生しい………そう………血の赤なのだ。

真っ赤な…流れる血。

まるでこの石は血まみれだ。





「………魔の者達の……血で染めた石ですって……お母様がおっしゃってたわ」