………ぜぇ…ぜぇ…ぜぇ…とリネットとオーウェンは肩で息をしながら額の汗を拭った。
両者とも、一歩も引かない。
………あ、明日は剣の稽古の日だっけ?
楽しみだなぁ―。
一人ぼんやりとしていると、背後のドアからエルシアが入って来た。
よく分からない論争からオーウェンはいち早く離脱し、エルシアの元に駆け寄って人目を気にせず抱き締めた。
リネットは甲高い悲鳴を上げていた。
幸せそうな二人を遠巻きに眺めながら、キーツは溜め息を吐いた。
婚約………出来るだろうか。
―――婚約を……ローアンに申し入れたいというキーツの焦燥感とは裏腹に、その頃から城内は慌ただしくなり、城に行く回数が徐々に減り始めた。
毎日のように聞くようになった………『影』の存在。
人気の無い密林や、国境の火山地帯でしか現れなかった影が、最近になって村や街に………なんと城の周りにも出没するようになったらしい。
出没する度に国家騎士団の兵士達が動き、城壁の外は悍ましい悲鳴が絶えなかった。
キーツは屋敷で一人、空しい時を刻んでいった。

