亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~

キーツはオーウェンに向かってテーブル上の砂糖菓子を投げ付けたが、ことごとく交わされた。

「………つ…次は絶対……絶対に…」

「……その次がいつになるやら…」

「うるさいなぁ!あんたは早過ぎるんだよ!アレクセイもなんか言ってやんなよ!真面目に!」

「私は単なる世話係り兼側近風情ですので……とてもじゃ御座いませんが、侯爵様に意見など」

「こんな時だけ急に下手に入るなよ!さっきまでの僕への不満は何だったんだよ!!なんか腹立つ…」

「―――もっと静かに出来ませんの?」

「「「おおぉっ!?」」」


キーツとオーウェンが腰掛けるソファの向かいに、いつからいたのか、紅茶を啜るリネットが座っていた。

敵意丸出しの、綺麗だが恐ろしい双眸が二人を映していた。

……キーツは震えながら、オーウェンは苦笑いを浮かべながら少し後退した。

………アレクセイはソファの後ろに回った。

「リネットさん……いつから…」

「いつからかしら?………遠い昔のことでもう覚えておりませんわ。………オーウェン様がコートを乱暴に脱ぎ捨てなさった時はもういましたわ…」

「………ああ…そう」

オーウェンははだけた前のボタンを素早くとめた。