亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~


冷や汗だらだらのキーツは笑顔で、やはり吃る。

「………嘘おっしゃい。絶対何かあったのね………違うの?どうして私に対してそんなによそよそしいのかしら?………どうして目を逸らすの…」

覗き込む様に見上げるローアン。キーツはやや顔を赤らめて思い切り顔を背けている。


「………それとも私が何か言ったのかしら?……なら正直におっしゃって。………分からないわ……私が嫌いなの?」

そう言うと、キーツは激しく狼狽した。

両手と頭を横にぶんぶん振る。

「――ち……違う!き、嫌いじゃない!嫌いなんか…そんなこと………」

「……じゃあ何ですの?嫌いじゃないならそんな風に避けたりしませんわ…」

「……本当に違うんだ!………嫌いなんかじゃない………僕は…………僕は………」




だんだんと口ごもるキーツ。
何故か顔がさっきよりも真っ赤だった。耳まで赤い。


横に降ろした両手の拳は強く握られ、ほんの少し震えていた。




不思議に思って、ただ無言で見ていると、キーツは突如顔を上げた。

相変わらずその赤さは変わらないが………何処か真剣なまなざしがそこにはあった。


「―――……あの………!………………あの……ローアン…」