亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~






「―――…だからお母様、近頃お疲れの様なの。お城は声が響くから、あんまり騒がないようにって………キーツ…キーツ…聞いてるの?」

「――――――………え?はい?…は、はい!……そそそそそうだね!城は響くよね!響くんだよね!」

「………………どうかしたのキーツ…」


………キーツの様子がおかしい。
おかしいなんてものじゃない。
城内に入って来た時に出迎えたら、急に動かなくなった。

手を繋ごうとしたら、物凄い勢いで引っ込まれた。
あからさまに目を合わせようとしない。
揃って歩く時は真ん中にルアを挟む。

……なんだか避けられている…気がする。


しかし完全に避けられているという訳ではない。
必ず近くにいるし、一緒に笑ってくれる。



………何かあったのだろうか。
リネットお姉様から苛められた?
世話係りのアレクセイの言う、『たまに出る鬱っ気』が出たのだろうか。


謁見の間辺りにまで来た時、ローアンはキーツに向き直った。

「………キーツ」

「―――は…はははい?」

……何故吃る?


「………何かあったの?」

心配そうにローアンが首を傾げると、キーツは激しく否定した。

「……い…いや……何でも…何でも無い…」