亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~


頬杖を付き、女王は真剣な面持ちで呟いた。


「………影…ですわね、軍部大臣」





―――『影』。






一斉にその場が静寂と化した。







皆やや俯いている。


軍部大臣はぽつりぽつりと口を開いた。



「はっ………………二年程前からでしょうか………数時間経つと死体が真っ黒なヘドロ状になり、化け物同然の生物と化していくのは……前々から報告されておりました。家畜を荒らしたり…人間に襲いかかったり………。…それが………近頃……」


軍部大臣は額の汗を拭った。







「………人間だけを襲うようになりまして………しかもその被害が多いのです。………………つい一週間前にも…群で襲撃があり………小さな農村が一つ廃墟と化しました…」


周りはざわめいた。

群になる?

人だけを襲う?


村一つ滅ぼす?



………そんなの………今まで無かった。






「………ほんの序章ですわ、皆さん。………あと数年後には…当たり前の事となりましょう……あれも生き物です。時の流れと共に、姿形、行動が変わる可能性は多いにあります。………予想していた範疇です。対応策を立てていかねば……いずれ手に負えなくなりますよ…」