亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~



ここ十年から二十年………内政がうまくいっていない。

農村部では不作が相次ぎ、原因不明の病が流行出している。


「………難民の保護もこれ以上は無理かと………特に多いのはデイファレトからの難民です。………あそこは今一番凍て付く時期ですからな………」


文化の異なる燐国の難民も、このフェンネルに移住して来ている。王政が成り立っているのは今やこの国だけなのだ。



「………問題は山積み……ですわね。………………冬は終わりましたから、飢餓の心配は無いでしょう。それと、賊が出るのは仕事が無いからです。……ワイオーンの捕縛の懸賞金、難民保護の労働金額を上げるように」


女王は全て迅速に、と言った。
大臣の一人がさらさらと羊皮紙に書き留めていく。


「………一番厄介な問題から討議しましょうか。…………軍部大臣」

「はっ」

軍事戦力、国家騎士団を担当する軍部大臣が、長い髭を撫でて前に出た。


「………先程まで軍議を行っていた様ですが………話しなさいな」

「―――はっ………。実は………このところ……被害届が一番出ている物でして…」


「………それは何だ?軍部大臣……」


他の大臣達は首を傾げた。

女王は既に分かっている様だ。