亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~





「………どうして………クライブは凄く良い人だ………立派な人だ………なんで婚約破棄なんか……」






クライブは……すっと目を閉じた。










「………私が………卑しい者だったからでしょう」









卑しい?









何が卑しいというのか…。







国家騎士団総団長をも勤めるこの男の何処が…。







「………私の身の上話はこの辺にしておきましょう。………ところでキーツ様、失礼ながら……相手の方はどういった方で?」


ぱっと話題がキーツに向き、やや狼狽した。

「………あ……相手?………あの……」

やや恥ずかしさを覚えながらも、キーツは答えた。


「………姫君だよ………第三王女………ローアンっていう娘だよ……」

「………ああ…」



クライブは微笑を浮かべたが、それはすぐに消えた。


………曇りガラスの様な瞳に、ぼんやりとした眼光が浮かんだ。




そんな小さな異変に、キーツは気付く筈も無かった。




















「…………………王族………ですか………………それはそれは誠に………めでたき事ですな」











―――その途端…。