「………どうして………クライブは凄く良い人だ………立派な人だ………なんで婚約破棄なんか……」
クライブは……すっと目を閉じた。
「………私が………卑しい者だったからでしょう」
卑しい?
何が卑しいというのか…。
国家騎士団総団長をも勤めるこの男の何処が…。
「………私の身の上話はこの辺にしておきましょう。………ところでキーツ様、失礼ながら……相手の方はどういった方で?」
ぱっと話題がキーツに向き、やや狼狽した。
「………あ……相手?………あの……」
やや恥ずかしさを覚えながらも、キーツは答えた。
「………姫君だよ………第三王女………ローアンっていう娘だよ……」
「………ああ…」
クライブは微笑を浮かべたが、それはすぐに消えた。
………曇りガラスの様な瞳に、ぼんやりとした眼光が浮かんだ。
そんな小さな異変に、キーツは気付く筈も無かった。
「…………………王族………ですか………………それはそれは誠に………めでたき事ですな」
―――その途端…。

