婚約は、愛の告白を意味する。
結婚前提の告白だ。
「………こ…ここここ婚……約……って………そんな…」
「………キーツ様は相手の方をお慕いしていらっしゃらないのですか?」
「………いや………………………………………好きだよ。………凄く…………好き………だけど……」
小さくなっていくキーツ。頭から湯気が立ちそうな程上気している。
「ならば、婚約なさい。貴方様の気持ちは、勝手に決められた訳ではありません。………婚約なさい。私も若い頃は、その様に悩みました」
―――え?
キーツはクライブに向き直った。
「………クライブって………結婚してたの?」
クライブはハハッと笑い声を漏らした。
「………しておりません。昔……ある方に婚約を申し込みました。……その方は…婚約を受けて頂きました。………しかし………結婚は出来ませんでした」
「………なんで?………寸前で前言撤回されたとか…」
「いいえ」
クライブは何処か遠くを眺めていた。
何も無い、虚ろな目で、虚ろを見ていた。
「………相手の方の御父上様から……婚約破棄を命じられたのです。………突然でした。……それから…引き離され………もう何年も会っておりません」

