亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~

クライブはちらりとキーツを一瞥し、ふっと目を逸らした。



「―――キーツ様は……政略結婚をなされるのですか………それはそれは…心苦しいことで…」

「………い…いや………心苦しいとか…そんなの有り得ない。有り得ないから!………………その……」

だんだんと顔を赤く染めて俯いていくキーツを見ながら、クライブは微笑を浮かべた。


政略結婚を決して拒んでいる訳では無いことを察した様だった。

むしろ…。


「………そうですか………なら……めでたき事で……。………素直に喜べば宜しいではありませんか」

「…………………そりゃぁ…そうだけど………」


ぱっとキーツは顔を上げた。
なんだか憂鬱な表情だ。

「………僕は………う、嬉しいよ………………だけど………相手はどうだか…………」

「………キーツ様は小心…」

「もういいよそれ。聞き飽きたよ。分かってますよ、僕は小心者ですよ」

はぁ…と大きく溜め息を吐く。













「―――早々に婚約なさい」

「………………うん………………って…ええっ!?」


真っ赤に上気した顔は酷く困惑していた。

クライブはさらりと言い放つ。

「……婚約を申し込めば分かる事です」