亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~

キーツの屋敷は、中央の中庭を囲む様な構造になっている。

木々が生い茂り、中庭全体にちょうど良い木陰が出来る。


周りは色とりどりの花が咲き乱れ、中庭を飾っていた。






……その真ん中で、風の音に混じって、鈍い金属音が木霊していた。


最初の十秒位は小気味好い音が続いたが、それはすぐに絶えた。




花壇の脇で痛む身体を起こすキーツ。模造の剣を杖代わりになんとか立ち上がると、視線の先には剣を片手にぶら下げた男が佇んでいた。


陽光の下に照らされたその長い髪は、雪の様に白い。口と顎の短い髭も真っ白だ。

垂れた前髪から、寂しい、虚ろな目がギラギラと覗いていた。


「………どうなさったキーツ様。………今日の剣は、キレがありませんぞ。………邪念は捨てなさい」

「………クライブ…少しは手加減してくれよ」


国家騎士団総団長、クライブ=フロイアは、この日キーツの剣の稽古に来てくれていた。

稽古をつけてもらってから、四年になる。

だいぶ俊敏に剣を扱いこなせる様になってきたが……クライブはやはり容赦ない。

これでは強くなっているのかいないのか分からない始末だ。


「少し休憩しましょう」

剣を鞘に収め、ベンチに腰掛けた。