亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~

どうせ父の仕事関係の難しい話だろう。

話している父は何度も溜め息を吐いている。
………ストレス?



………立ち聞きは良くない。

ここはおとなしく、外で待っていようと扉を閉めようとした。



「―――キーツ坊ちゃまに…そろそろ教えて差し上げても宜しいではありませんか、旦那様」




ぴたり、とキーツは手を止めた。

扉の僅かな隙間に、耳を押しつけた。
くぐもったアレクセイの声が、はっきりと聞こえた。



「―――その様に黙っていてはなりませんぞ。いずれ分かることで御座います」


「……時期をみて……と考えていたのだが……そろそろ…言うべきか…」


「………大丈夫で御座いましょう。旦那様が考えているのと違って、キーツ坊ちゃまは案外すんなりと受け止めるでしょうよ。私が保証致します」


「………そうなのか?……お前がそう言うなら本当であろうが…………最初は誰しも困惑するだろう?…ましてやキーツはまだ11………何かとショックも…」


「………旦那様……親子揃って本に小心者ですな。………その点は大丈夫です。ショックはショックでも、キーツ坊ちゃまにとっては良い方の衝撃でしょうな」







「―――ローアン姫との結婚は…」