…取るに足らない……それはどういう…。
「そう!取るに足らない!………言ったでしょう?その内………私にとっては腹が煮えくり返る様な事ですが…貴方にとっては最高の朗報が飛び込んで参りますわ。………ああ……憎たらしい!」
リネットはぶつぶつ言いながら、紅茶のカップをキーツに押しつけ、部屋から出て行った。
………毎度思うが………嵐みたいな人だ。
彼女は結婚なんかしないだろうな……。………絶対。
差し金の意味と取るに足らない訳が何なのか分からないまま、キーツはアレクセイに呼ばれた。
この日も父が同伴していた。
謁見の間からまだ戻って来ていない。
部屋の前でローアンと別れ、アレクセイと共に城から出た。
丘の下の貴族の城の前まで来ると、アレクセイは「車を来させますので、ここで待っていて下さい」と言って中に入って行った。
ぼんやりと入口の前にいると、城門に車が止まった。
うちの車じゃない。
なんとなく眺めていると……丘の城へと続く階段から、長身の男が降りて来た。
………オーウェンだ。ということはあれはオーウェンの屋敷の…。
ふと、オーウェンがこちらをちらりと見て来た。
………あの男は背中に目でもあるのか。

