亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~

リネットは何かとキーツに突っ掛かって来る。特にローアンと二人一緒にいる時は。


……彼女の突発的行動や男嫌いには、オーウェンもまいっていた。

「……リネットお姉様、そういえば昨日伯爵家のお方がいらっしゃったようですが…」

ローアンは紅茶を一つキーツに差し出した。

「ああ……そういえばそんなのが来ましたわね。……お母様の差し金でしたわ。会った直後、二秒で追い払いました」


………二秒…。………差し金?………差し金って…。

「………あの…差し金って……」

恐る恐る訊いてみると、リネットは小馬鹿にした様なせせら笑いを浮かべた。

「……ご存知ないの?…………会ってから既に四年も経つというのに………不憫な方。ほほほほ!」

リネットはレースのハンカチでぱしぱしとキーツの頭を叩いた。

「………その内分かりますわ。お母様か、貴方のお父様からいつか話があると思いますわよ。………貴方も差し金ですもの」


―――差し金。


………何の事だろう。

訳が分からずハテナマークを頭上に浮かべていると、ローアンは何か思い出した様に手を叩いた。


「……エルシアお姉様はもう15ですわよね?………来年は御結婚されるのですね」