亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~


―――御付きのメイド数人が、ルアを泡の塊にしていた。
もこもこと膨らんでいくルア。
泡から見えるのは角の青い玉だけだ。


「一階の応接間にいたの。時計棚の上に隠れていて降りて来なかったから、降りて来ないと角をもぎ取るわよって言ったら…降りて来たわ」

「………」

ローアンは冗談のつもりだっただろうが……冗談に聞こえない。


ローアン、もっと優しい言葉をかけてやってくれ。心なしか、泡の中でルアがまだ震えている気がする。


「ルアったら…もう4歳なのに。まだまだ子供ね」

「……ああそっか…もう4歳になるんだっけ?………早いなぁ」

………四年。


………出会ってから………そんなに経つのか。


向かえに座るローアンを見つめながら、ふと思った。





………彼女は…綺麗になった。

………輝いている。


………こんなこと…絶対口に出して言えない。

恥ずかしくて死にそうだ。



彼女が顔を上げたり、ちょっと動く度に……ほんのりと甘い香りが漂う。






……今もなんというか……アールグレイみたいな……。



………アールグレイ?






………紅茶の……。