亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~

「………この野郎!」

ビュッと剣で突いて来たのを薙払い、軽やかなステップで後退する。

「未来ある若き学者の卵達…諸君、剣を持つ貴族ならば、あの様な浮浪者の如き体たらくを見せては…ならない」

切りかかって来たのを再度軽々と撥ね除けた。

相手の学生を全く見らず、まるで論議する様に周囲に向かって話し続ける。

それが更に、癪にさわった。

相手の学生は、ぺらぺらと話しているオーウェンに向かって無言で切りかかってきた。








向かい合ってこその決闘。

最初から背後に切りかかるなど、以ての外。









「………であるから諸君、こういう低レベルな野郎は…!」


振り返り様に、真っ直ぐ伸びた剣に向かって回し蹴りを放った。




ギンッ……と硬い鋭利な直線が、根元から折れた。







「……早々に…」


怯んだ相手のコードタイと首根っこを掴み、背後の柱に突き放した。


背中を強打し、うっ、と一瞬息が止まる。


オーウェンは振り回していた剣を握り変え、腕を大きく振り上げた。








「―――潰して踏み台にすることだ」