亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~

鋭い剣身が交わる響きと共に、二人の人間の声が聞こえてきた。




「―――野蛮なことだな、君。知識の宝庫で乱行しか招かない剣を抜くなど、お門違いにも程があるというものだ……おっと」

「うるさい!…馬鹿にしやがって…!」

下級クラスの貴族と思われる学生が、興奮気味に肩で息を切らしていた。その手には細身の剣。
貴族は剣の所持が認められている。血の気の多い若者は、決闘なんぞを申し込んで殺し合いをしたりしている。

インテリ学生達にとっては最高の娯楽だ。


そして今、二人の若者が対峙していた。


酷く苛立っている学生。その向かいには……。







………オーウェン=ヴァンニ…??








間違いない。





ついさっき不敵な笑みを浮かべて立ち去って行った、エセ紳士だ。

皺一つ無い真っ白な襟のずれを直しながら、片手に剣をブンブン振り回してにやにやしている。









………物凄く…楽しそうだ。




「どうしましたか?構えが成っていませんが…ああ、その前に剣を落としそうですね。足の甲に刺さない様にお願いしますよ?」


ケラケラと周りから笑い声が響いた。

相手の学生は怒りに顔を真っ赤にする。