亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~

「……何か他に用事がおありだったのだろう…」

別段気にすることはない。
特に気に掛けること無く、トウェインは足早に廊下を進む。

「…?…どこ行くんだよ…」

階下には降りず、トウェインはそのまま奥へと歩いて行く。

「………資料室だ」

「資料室~?…何でまたそんな人っ子一人寄り付かない所に……」

………ああ、ね。…昨夜の……調べるのか…。

………『ローアン』を調べるのだろう。

ジスカは胸の辺りに沸き起こる、ちくちくする妙なムカつきを抑えた。

「………はーん……気になって仕方無い……ってか?」

「………」

返答は無い。
まあ……図星だろう。

………なんだか酷く気分が悪いが……。

「………良いぜ。俺も手伝う」

ジスカは溜め息混じりに言った。前を歩くトウェインにすぐ追いつく。

「……いい。………手伝うなど……」

「あの膨大な量の紙の束、お前一人で全部見れんのかよ………」

トウェインは一瞬口ごもったが…。

「―――……見れる!」

「………嘘言うな!ちょっとは素直に人の親切を受け止めろよ!可愛くねーな!」

「………可愛いの意味が分からん!!」