亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~





「………ただいま戻りました。第3部隊総員何事も無く無事帰還です」

「同じく第4部隊も支障無しです」

ジスカとトウェインはベルトークの前で揃って敬礼をした。

………決まっている筈のゴーガンがいない。
「御苦労。………追撃は無かった様だな。各自、よく休め。……ジスカとトウェインは軍議の部屋へ。………それと……マリア=クローデル」

整列していたマリアはベルトークに顔を向けた。

「……はい」

まさか呼ばれるとは思っていなかったマリアは、小さく首を傾げた。

「後で私の所へ来るように。……以上」

ベルトークはその場で“闇溶け”で消えた。

イブは不思議そうに腕を組んで考え込む。

「何だろうね―………何かマリア、機嫌を損ねる様な事した?………足踏んだとか…」

「………踏んだ覚えは無いわ。………それに第1部隊隊長とは滅多に会わないし、話さないし………多分右足のことだと思うけど」

ちらりとマントの下の右足に視線を移した。

「……そっか。……昨日の暴走は凄かったしね。……もし怒られたら、逆ギレして一発殴りなよ…」

イブは恐ろしいことを言う。

………そんな事をすれば死んでしまう。
自殺行為だ。