亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~


「―――…その時の話を、聞きたいな………リンクス、私に代わって聞いてくれ………さて…再戦の時期だが……」

総隊長はゆっくりと腰の長剣を抜き………垂直に、切っ先を床に突いた。

―――キィン…。

鈍い金属音が室内に響く。










「二ヵ月………二月後だ。………反逆を起こしてからちょうど………六年になる日だ。………………私も出る…」

ゴーガンは目を見張った。
総隊長が直々に戦場に出るなど……。

「……総隊長………そんな二月後など………もっと早くに…」

キィン…と、再び鈍い金属音が鳴り響いた。……ゴーガンはぐっと声を詰まらせた。




「―――カルジス………昔から反抗者であるのは………変わらんな………………その口を閉じろ。………一匹狼は統率を乱すだけだ。…………………………二人とも…下がれ」



静かな、しかし身を貫く様な覇気。………光の無い不気味な眼光は、有無を言わせない何かがある。


………後ろで組んだ手が震えるのが分かった。
力を込めても、爪を立てても、震えは止まらない。



「………失礼します」
そんなゴーガンを尻目に、ベルトークは先に頭を下げて踵を返して出て行った。

遅れてゴーガンも後を追った。