亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~

何がおかしいのか、総隊長は笑いながら、身体を小刻みに震わせる。

「………………時だ。………時の訪れを示す…………これは前兆だ…」

………時の訪れ?………この方は何を言っているのか。
ゴーガンは怪訝な表情を浮かべた。

「………総隊長………それはどういう…」

「…………何でもない………気にするでない………私の…勝手な想像だ………」

「………」

ゴーガンはそれ以上何も言わなかった。
間を置いて、ベルトークが話始める。

「………そのため…戦力は削れましたが……あちら側もそれは同じ。けしかけてくるということは無いでしょう。……その間、時間があります…こちらも時期を見計らって…再戦の方向を考えています……」

そう言った途端、ゴーガンが意を申し出て来た。

「……俺は反対です。相手は弱っているんだ………今叩かなくてどうする………!」

「……追い討ちは確かに効果的な戦法だが………それは騎士団の中では禁じ手だろう…」

―――戦士たる者、無駄な被害を避けるため、戦いはその一度で終わらせる。

常に向かい合い、常に正面から。
誠の義のある戦いとは、互いの戦意が向き合った時のみ行われるもの。
………戦意の無い相手に剣を向けるのは、戦士とは言えない。