亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~


「――え?死にかけの赤ん坊?……あら、本当…」

よく説明されずに連れて来られたらしいマリア。ジスカが抱える赤ん坊を見て、すぐに事情を理解した。

「……なあイブ……いくらなんでもマリアに…」

言い終える前に、抱いていた赤ん坊をマリアにひょいと取り上げられた。

―――え?、と呆然とするジスカ。

マリアは泣かない赤ん坊の頬に触れた。

「………うーん……まだ母乳出るかしら…」




………ええっ…!?



「………あー…マリアって……」

「あら?言ってなかったかしら?……私、元子持ちよ」


衝撃的事実発覚。

いや……ね………まあ26歳ですから……出産経験がある可能性は大ですが………………子持ちに見えません!

ジスカは内心で突っ込みをいれた。

「………だいぶ経つから…出ないかも…」

と言って、おもむろにマントを脱ぎ、軍服の前のボタンを外しだした。
白いブラウスから、更に真っ白な乳房が覗く。

………はっ、と我に返り、周りの男性陣はおろおろしながら、一斉に回れ右をした。

マリアはくすくすと笑う。………人間はこうやって育てられるのに。

赤ん坊は弱々しい動きで吸い付く。
………母乳はなんとか出た。
しかし…吸う力が無かった。