亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~

赤ん坊は全く泣かない。顔色は悪く、なんだかぐったりとしていた。

イブが涎を垂らして赤ん坊を凝視していると、すぐにジスカが連れられてやって来た。

「…何だ何だ~?……早く来て下さい!あの娘本気です!喰われる―!!………ってどういうこった………」

「ねぇ~ジスカ……食べちゃ駄目~?」

「食べちゃ駄目~。……は―…赤ん坊かよ…こりゃあもう死にかけだな…」

イブの手から赤ん坊を抱き取り、白さを通り越して青くなっている肌に触れた。
………もう冷たくなってきている。

声も何もあげない小さな口は、物欲しそうにぱくぱくと開閉を繰り返していた。

……可哀相だ。せめて母親の腕の中で死なせてやりたかったが…。

「―――ジスカ、牛乳あげようよ」

「………あのなぁ…赤ん坊は母乳じゃないと…」

「じゃあ、母乳」

ジスカは閉口した。周りも汗をかいている。

「……いや…母乳つったって……」

「あ、そうだ。マリア呼んでくる~」

「ああ…マリアね…………ってえええええ―!?」

なんでマリア!?確かに女性陣の中では最年長だけど!

イブを止めることも出来ず、ただうろたえるジスカ。
イブに引っ張られて問題のマリアさんがやって来た。